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学習履歴は、教材を学習した状況(時間、回数など)と、学習の進捗(どこまで、テスト正答数など)を数値化したもの≪AICC、SCORM:データモデル要素≫。
これを統計化してマネジメント用のグラフなどにまとめることで≪ISO9001:2000≫、教育ミッションの達成度を考察しやすくするのが学習管理システム(LMS)の役割です。
プログラム学習(個別学習)では、<テスト→回答(解説)→テスト…>という流れを持ち、最初のテストで学習前の理解度、後のテストで学習後の達成度(=次の学習前の理解度)をはかるのが基本とされています≪スキナー:道具的条件付け≫。
テストは、学習者全員が共通の認識で問題に取り掛かれるようにするためと、教材ごとに学習履歴の意味がばらつくのを防ぐために、二択以上の選択肢回答型で統一されている場合が多く、問題を数多く解かせることで学習者の理解度と傾向をより確実につかむ、という方式が一般的です。
ただし、これらのものは学習履歴の取り方(=LMSの役割)を一定にするためのルールであって、 教育ミッションを達成するために本当に必要な学習履歴を得るには、これを踏まえた上でさらに、 テストの設問や選択肢の内容、解説の内容や表現手法といった「教え方」を検討し、正しくコンテンツに反映しなければなりません。
また、<回答(解説)>の方式には、「直線型」「分岐型」「治療型」の3つがあります≪スキナー:道具的条件付け≫。以前はSCORM1.2の規格上、「直線型」以外は学習履歴の対象外でしたが、現在ではSCORM2004エンジンを用いることで、「分岐型」「治療型」にも対応可能とされています。
「学習者の誤答にも意味(教育効果)がある」≪スキナー≫という基本思想を忘れず、テストに対する解説の役割に応じた「教え方」を考えていくことが大切なのです。
AICC(エーアイシーシー)
コンピュータを利用してい学習する教材を開発する上での国際標準規格として制定されたものです。すべての教材が、ベンダーに関係なく、すべての学習システムの上で動作することを目標としています。現在の SCORM は、このAICC が元になっています。
SCORM(スコーム)
(The Sharable Content Object Reference Model)の略
1997年にアメリカの標準化団体 ADL が策定した eラーニングの国際標準規格。この規格に則って教材コンテンツを開発すれば、開発したメーカーを意識することなく、すべての LMS (学習管理システム) であらゆる教材が動くようになります。
学習管理システム(LMS)
(Learning Management System) の略
LMSとは、学習管理から教材作成、成績管理などといったeラーニング運用に必要な機能を備えた管理システムのことで、eラーニングを運用する上でなくてはならない存在です。
「ボタンを押す」という行動を取ったにも関わらず結果が何も変わらなければ、それが繰り返されるうちに、学習者は強い無気力に陥ってしまいます。
学習者がボタンを押したい(結果を変えたい、本来なら変えられるはず)と思いながらも、当のボタン自体が画面上に現れず、学習が進行してしまった場合も同様です≪セリグマン:学習性無力感≫。
そのため、e-learningでは、学習意欲を高める仕組みを、注意(Attention)、関連性(Relevance)、自信(Confidence)、満足感(Satisfaction)の4つに整理して考え、積極的にインタラクションとして取り入れていく「ARCSモデル」≪ジョン・M・ケラー≫などがインストラクショナル・デザインの手法として提案されています。
ただし、行動によって結果が変わったとしても、単純すぎる(期待値が低い)行動に対して複雑な(価値が高い)結果が出たり、逆に複雑すぎる(期待値が高い)行動に対して単純な(価値が低い)結果が出たりすると、 やはり、学習者は行動を続けようという気力を失ってしまいます≪アトキンソン:期待―価値モデル≫。
また、シミュレーション機能や事例ドラマなどの場合、その単元の本来の達成目標とシミュレーション・ドラマの結果(機能)が直接的に結び付けにくいため、 「行動の結果と本来の達成目標の関係が明確に示されていない」、「単に状況を長々と見せるだけ」、「操作が複雑だったり時間がかかったりする割には結果が簡単(あるいはその逆)」といった悪い印象を受けると、そこで提示される情報の有用性とは一切関係なく、 学習者はその教材での学習を無価値と考えるようになってしまいます≪同上≫。
人は、自分の先入観に沿う形で情報を受け止め、それに従うことで能動的に行動します≪ロジャース:パーソナリティ理論≫。
この先入観の軌道修正や、別の見方へつなげるきっかけとして、インタラクションは高い効果を発揮します。新たな局面や充分な情報を盛り込めない箇所で用いて逆効果にならないように、使用箇所は充分に検討する必要があるのです。
学習性無力感
いやな結果を回避しようと様々なこと試みるが避けることができず、「自分が何をしても状況は変わらない」ということを学習したために生じる無力感のことをいいます。
ARCSモデル(アークスモデル)
・Attention「注意」
・Relevance「関連性」
・Confidence「自信」
・Satisfaction「満足感」
という四つの側面に分け、その頭文字をとりARCSと名づけた動機づけモデルのことです。この動機づけモデルでは、やる気を出させるためにはどうしたらよいか?、勉強する意欲を持たせるためにはどうしたらよいか?、と漠然と考えるより、
なぜやる気が出ないのかという側面から考え、それに応じた対処を行うことが効果的ではないかと考えられています。
インストラクショナル・デザイン
体系化された理論のもと、学習教材や研修をデザインするプロセスを管理することで、品質の高いコンテンツを生み出す手法として、現在注目されているのがインストラクショナル・デザインです。インストラクショナル・デザインを導入することにより、勘や経験による教材作りから脱却し、少ない投資で最大の学習効果を実現できると言われています。
アトキンソン:期待―価値モデル
例えば、「A=楽しめる内容」であっても仕事に役立つ見込みのない教材であれば意欲が下降し、逆に「B=仕事に役立つ」内容であっても難易度が高ければ同様に意欲が下降します。このAとB双方が高ければ高いほど意欲も高まるとする考え方です。
シミュレーション機能
代表的なものに、飛行機の操縦技術を習得することを目的とした"フライトシミュレーション"があります。
その他、例えば法令や企業倫理に関する事柄を選択していくことでどのような結果を招くか、といったものなど内容に応じたシミュレーションの方法がeラーニング教材の中で用いられています。
ロジャース:パーソナリティ理論
「人間はみな自分を中心とする,絶え間なく変化している私的な世界,つまり現象的場(phenomental field)に存在している。人間の行動を規定するものは客観的・絶対的な世界ではなく,その個人が経験し,知覚している私的な世界である」とする心理学者ロジャースの理論。
マンガやゲームを子供のためだけのものとする欧米とは異なり、日本では、大人でもマンガやゲームを趣味とする人が社会的に認められており、銀行ATMのインタフェイスや取扱説明書、さらには学校指定教科書といった社会的信頼性を重視するものにも、マンガ的な表現やゲームブック的な手法を取り入れるケースが多くあります。
このような背景を受け、e-learningでも、主に学習の動機付けを目的に、マンガ風の挿絵や、カートゥーン風のアニメムービー、 RPG風のシステムなどを積極的に取り入れている傾向にあります。
しかし、特に企業教育の教材の場合、マンガやゲーム的な面白さを表面的に取り入れてしまうと、趣味性や娯楽性が強い分かえって学習意欲を奪う恐れがあります。
学習者にとって企業教育は、第一に、組織員としての自らの評価を高め、相応の報酬を得るための手段ですが、報酬には、その行動を正しいものと裏付ける側面と、報酬を貰える/貰えないという基準が生じて行動が制御される側面があります。
また、マンガやゲームに抵抗が無く、個人ではそれを積極的に楽しめた人も、業務として報酬が付いた状況でそれを与えられると、行動の目的が興味の満足から報酬の獲得へとすり代わってしまいます。
その結果、誰かに制御されているという意識から、元々興味がなかったもの以上に動機付けを低下させてしまうのです≪デシ:外的報酬の阻害効果≫。
学習者が教材に求めているのは、手軽に豊富な知識を得てさまざまな推論をできるようになることであり、それを実現するためには、さまざまな表現にチャレンジすることも必要です。
マンガやゲーム的な表現は、単純化によって学習者が感情移入しやすく、見終わった後の単純な言動に強い影響を与えるのに非常に効果的です≪バンチュデラ:観察学習≫。 これはそのまま、記憶の持続にもつながります。その効果を見極め、目的に応じて適切に使うことが大切なのです。
カートゥーン
画材の"カルトン"に由来し、本来は映画の間の待ち時間に流す短編のアニメ作品を指していましたが、主にアメリカの漫画、特に、風刺漫画を指しています。有名なものにバックス・バニーやトムとジェリー、ポパイ、ウッドペッカーなどがあります。
RPG(ロールプレイングゲーム)
Role playing gameの略称。「役割を演じるゲーム」の意。登場キャラクタに役割を持たせ、さまざまなアイテムを使用したりして、ストーリーを展開させていくゲームの種類の一つ。ロープレなどと略されることもあります。
デシ:外的報酬の阻害効果
例えば、ある教材を用いて学習するとき、その報酬として金銭などの提供を受けると、本来の目的である知識の習得が希薄または低下してしまうことをいいます。
バンチュデラ:観察学習
対象となるものを"見る"ことで学習することをいいます。「言語」を持つ人間だけができる学習方法と考えられています。
一般にe-learningは、既存のテキストやビデオ映像といった、本来別メディアだったものを移植する場合が多く、その際、予算やスケジュールの関係から、メディアの移植によって発生する学習スタイルや表現の違いを充分検討しないまま、e-learning化してしまうケースが後を絶ちません。
その際一番の問題となるのが、同じ画面上に表示される絵(CGや動画)と言葉(文章や箇条書き)の関係です。
特に、既存のテキストで用いられている挿絵や図表は、そのページ全体の文章に意味がかかっている場合、文章の一部にかかっている場合、直接な意味のかかわりはなくイメージとして置かれている場合などがあり≪塩田英子:挿絵効果≫、その役割を理解した上で、補足したり強調したり、場合によっては切り捨てる必要があります。
挿絵効果は、大きく「情報整理型」「反復型」「解釈型」に分けることができます。
このうち短時間で確実に理解でき、再生率も高いのは「情報整理型」。 絵の内容を言葉でまとめる(機械の断面図と部位名の指示など)、または言葉の内容を絵でまとめる(事件の経緯と状況図など)といった、主従関係を明確にしながら、それぞれの表現の得手不得手を補い合い、内容理解を深めるタイプです。
「反復型」は、ニュース映像とテロップのように、同じ情報をそれぞれで伝えるタイプ。情報を強調し印象付け、補正する効果はありますが、絵と言葉の両用により情報量をふやす効果、理解しにくい情報をわかりやすくする効果はあまりありません。
そして「解釈型」は、抽象画とそのタイトルのように、片方が示す情報の一部をもう片方で拡大解釈して伝えるタイプ。1つの視点(先入観)に固まることは防げますが、情報にぶれが多い分、かえって理解を妨げる恐れもあります。
さまざまなメディア教材をe-learningにまとめる場合、そのメディアの得意・不得意分野を考慮してある程度手を加えないと、e-learningの教材として不完全になるばかりでなく、元の教材が持っていた効果も失ってしまう結果となるのです。
多くのe-learning教材では、画面情報として、箇条書きや図表、映像やCG、解説文やテロップが同時に表示され、学習者は、インタフェイスの形状や位置関係などから、表示されている情報の役割を認識しています≪メンタルモデル≫。
これを考慮してe-learningでも、「有用性」「有効性」「効率」「充足」を度合い化したユーザビリティ≪ISO9241-11≫が重視されています。
しかしLMSなどのアプリケーションレベルではISOの認定を受けるケースがあっても、教材レベルで認定を受けることは、予算やスケジュールの関係、あるいはLMSに対する依存性の問題などからほとんど無く、もっぱら、作り手側のセンスと配慮によって見やすさ・わかりやすさが保たれているのが現状です。
学習中、実際に学習者が直接見るのは、教材の中で、切り替わりながら次々と表示されていく文章や図などです。そのため、インタフェイスのユーザビリティのほかに、中で扱われる個々の情報の見やすさや表現的なわかりやすさが重要となります。
たとえば、箇条書きの見出しと本文が、表記的な区分けがないまま乱雑に並んでいた場合、 他と毛色(階層)が異なる見出しが全体の理解を妨げ、読み取ること自体ができなくなってしまいます。逆に、本来並列で並ぶべき箇条書きの表記方法がバラバラの場合も、同様の結果となります≪パラレリズム≫。
また、人は目立つもの、大きいもの(細々していないもの)、変化するものに本能的に目を奪われ、その際、他への注意力を失ってしまう傾向があります≪視覚認知≫。
インタフェイスデザインから認識した役割と、中で扱われる情報の意味合いに少しでもズレを感じると、学習者はそれだけで理解を妨げられます。また、乱雑、見づらい、といったの不快さも、理解力に大きく影響します≪プロダクションルール≫。
教材のユーザビリティが充分検討されているかどうか、また、確認し、場合によっては修正する手段があるかどうか、といった点も教材購入・教材制作では重要なポイントとなるのです。
メンタルモデル
例えば、ボタンに「?」マークをつけると、「使い方や取り扱いについての記述がある」と意識するように、ある情報に対してユーザの持っている心的なモデルのことをいいます。
ユーザビリティ
一般に「使いやすさ」のこと。様々な機能になるべく簡単な操作でアクセスできることや、使っていてストレスや戸惑いを感じないことなどが、優れたユーザビリティにつながり、また、ユーザが目標の操作を完了するまでに費やした労力などもユーザビリティの指標となります。ソフトウェアの使用感を指すことが多く、広くハードウェアまで含めた工業製品全般に対して使う場合もあります。
パラレリズム
二つの事柄を比べて書く場合、文章も同様に対比させることで表現をわかりやすくさせる手法。
例)
(1)「この薬は効き目があるが苦くて飲みづらい。」
(2)「この薬は苦くて飲みづらいが、この薬はよく効く。」
(2)のように書くことで、対比させているものが明確になり事柄を効果的に伝えることができるようになります。
視覚認知
目から入ってきた情報を分析して理解することをいいます。一般に小さいものより大きいもの。制止しているものより動いているもののほうが情報の認知度が高くなります。
プロダクションルール
教材としての有用性を高めるための定型的な知識の手法、表現方法を指します。